次は「ポーギーとベス」

リヨン・オペラ座のプログラムは、4月28日~5月7日に隣町ウランのルネサンス劇場でクルト・ワイルの歌劇「レディー・イン・ザ・ダーク」の公演(フランス初演)があり、その後5月17日からはオペラ座でジョージ・ガーシュインの歌劇「ポーギーとベス」の公演があります。

「ポーギーとベス」は、当然の事ながらそのキャストの殆どが黒人ですが、ガーシュインの遺族の指定・取り決めにより、白人の役以外は「アフロ・アメリカン」でなければいけない事になっています。この方々、シドニー・ポワチエ主演で1959年に製作された映画版が、原作を無視したミュージカル仕立てだった事からそれを不服とし、映画に関する全ての権利を買い上げた上に、全てのフィルム、プリントを焼却してしまったと言う逸話があるほどで、この方々の許可なくして公演は成り立たないのです。しかしながらアメリカから大人数の黒人歌手に来てもらうのは、どこかの団体の引越し公演ならまだしも、旅費や労働ビザ等の問題もあり余り現実的ではないので、遺族との交渉が必要だったわけですが、最終的には「黒人ならOK」と言う許可が頂けました。
勿論、コーラスも黒人でなければならないのは同じで、去年、黒人歌手のエキストラ16名募集のオーディションが行われました。しかし、フランスにはアフリカ系移民が多いですが、ラップなら兎も角オペラを歌えるかどうかとなると別問題。その為、始めリヨンだけを予定していたオーディションは、その後パリとロンドンでも行われました。

こうして選ばれた16名が、黒人ソリスト達と共に舞台上で活躍するわけで、現在行われているリハーサルも彼らが中心となってやっています。それじゃあ残る正式団員の我々はバカンスか?と言うとそれは大きな勘違い!! 舞台袖で陰コーラス、あるいは舞台にいてもチュールの幕で客席からは隠れて見えないと言う状態であっても、ちゃんと参加させられるのです。
しかも、「舞台に上らなきゃいいんだろ?」といわんや、第2幕後半のピクニックに出掛ける場面では、全員がカーニバルさながらに思いっきりメイクをして誰が誰だか分からない扮装で客席に登場。更には、「どうせ誰だか分かんないんだから~!」とばかりに、そのまま勢いで第2幕第2場は舞台にまで出てしまうのです…(^^;
先日、そのメイクの試しが行われたので、出来上がったところを携帯電話のカメラで撮ってみました。僕はマクドナルドのロナルドみたいなピエロですけど、同僚の中には「キャッツ」の中の猫や、キッスのジーン・シモンズみたいなメイクされてる人までいて皆凄いですよ。これが決定かどうかは分からないですけどね(笑)。

正直なところ、このオペラだけは何処をどう転がっても自分は絶対に演る筈のない曲だと信じていたんですけど、少し考えが甘かった様です(^^;

カテゴリー: 仕事 タグ: パーマリンク