有馬すすむ『スーパー・タッチ』

Super Touch
少し前になりますが、オーディオマニアの同僚から珍しい録音を聴いたという話をされました。
なんでもこれはリヨンの某オーディオ・ショップの店主個人所有のLPレコードで、これが通常のレコード制作の過程を経ずに直接ディスクに録音されたもので、音像定位のバランス、ダイナミック・レンジの広さ、スケール感等が凄くて、まるで生演奏を聴いているような信じられない音だったということでした。
彼が携帯のカメラで撮ってきたレコード・パンフレットを読むと、それが有馬すすむの『スーパー・タッチ』という1977年録音されたダイレクト・カッティング・ディスクだということが分かりました。 パンフレットの内容を読んだら、合計9本のマイクを使って録音されたダイレクト・カッティングとは一体どんな音なのか、「10万円のステレオで聴くと20万円の音がする」という意味はどういうことなのか、とても興味を惹かれました。

実は昨年、ロンドン大学ゴールドスミス校のジャズピアノ・コースを修了しました。勿論、通学は不可能なのでオンライン受講でしたが、その代わり毎週数曲課題を録音してインターネット経由で提出しなければならずとても大変でした。でも、子供の頃に自分の意志でピアノを習い始めたものの、その後中途半端なところで止めてしまったことにずっと後ろ髪を引かれる思いだったので、一応、曲がりなりにも修了という形で自分なりのけじめを付けることができて良かったと思います。

閑話休題。話を元に戻しますが、自分自身もジャズピアノを学んだ所為もあり、より一層興味を惹かれた『スーパー・タッチ』でしたが、同僚から時間があったらそのオーディオ・ショップに行って聴かせてもらったらと勧められたので、オマーン公演から帰って11月にオペラ座の「子供と魔法」公演の合間に行ってみたんです。
ところが、その時はレコード盤面の手入れが必要で、聴かせるために機材の準備もしなければならないので、用意ができたら連絡しますと言われ、残念ながら聴くことはできず帰ってきました。その時、店主自身は手放す気はない、結構高値でオークションで取引されている等、話を色々聞いていたら益々聴きたいという思いが強くなってしまいました。
それで帰宅してから、実際のところどうなんだろうと気になってネットで検索してみたら、凄い高値がついているサイトに混じって、フランスの中古品販売のサイトでびっくりするような安値で売りに出されているのを見つけてしまったんです。価値判断なんてまったく人それぞれですよね。当然、迷わずポチッとしてしまいましたよ(^^;

それから数日後、LPレコードが届きました。70年代終わりに日本からの輸入盤としてフランスで発売されたもの。昔自分でもよくやりましたがフィルムパッケージを外さず、開口部だけ切込みを入れてレコード盤を取り出すという方法。小包みを開けた時に一瞬新品?と思いましたが、このお陰でジャケットはほぼ新品に近い状態に保たれていて、盤面にも傷はなく出品者のコメント通りの良品でした。

我が家の5万にすら満たないレコードプレーヤーでは果たしてどんな音がするのか興味津々でしたが、いざ聴いてみて唖然としました。有馬すすむのテクニックも凄いんですけど、同僚が言っていた意味もよく理解出来ました。B面の「フィーリング」(“Feelings”)なんて思わず涙が出てしまいましたよ。こんなプレーヤーでさえもピアノの音が細部に至るまでよく聴き取れるなんて、恐るべしダイレクト・カッティング!
1回目はそのままプレーヤーで聴きましたが、勿体ないので2回目はパソコンに取り込んでデジタル化しちゃいました。その後は専らハイレゾで聴いていますが、それでも決して悪くないですよ(^^)

長文失礼しました。

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